『地の糧』の着衣入浴シーン

アンドレ・ジッド(1869-1951)が書いた『地の糧』という小説の中に、次のような一節があります。

――それは歓楽の庭であった。毛織物を着た男たち、縞模様のハイクを纏うた女たちは湿気が身に滲み渡るのを待っていた。彼らは依然としてベンチに居残っていたが、あらゆる声は黙然と鳴を静め、沛然と濺ぐ雨滴に耳をすましていた。彼らは真夏の通り雨に衣服をしとどに濡らし、わざわざ肉体を洗うにまかせていた。*1

これは、30年以上も昔、私が高校生だったころに出会った着衣入浴シーンです。舞台は、アルジェリアのビスクラにある庭園で、ミモザの香りが立ち籠めています。一幅の絵のような、美しい着衣入浴シーンです。

ところで、このシーンに登場する女性たちは、「縞模様のハイク」というものを着ています。「ハイク」というのは、おそらくアルジェリアの民族衣装ではないかと思われるのですが、私には、それがいったいどのような衣装なのかというのは、まったくの謎です。どなたか、ご存知の方がいらっしゃいましたら、ご教示をお願いしたいと思います。

*1:アンドレ・ジッド『地の糧』(今日出海訳、新潮文庫、1952年)。